2021年7月3日が一生涯忘れらない日になるとは思ってもいませんでした。

全国ニュースでも流れているように熱海市で甚大な土砂災害が発生し、伊豆山の町や道路に猛烈な土石流が流れる映像を見て呆然としました。今日も国やたくさんの地域から派遣された自衛隊、消防、警察の方々が最前線で懸命な救助活動をしてくれています。被災された方々に心からお悔やみを申し上げると共に、安否不明者の方々が救助される事を願っています。

最前線での救助活動だけでなく行政・民間が一体となって被災者のサポートしている中、我々にできる事は何か。

昨日社員みなで対話・議論し、選択したこれからの活動を記したいと思います。

可能な限り仕事を延期・調整し、消防団活動を支援する

現在、御客様からの急を要するご依頼以外は可能な限りリスケジュールをさせて頂いております。

当社は熱海市最初の消防団協力事業所として認定され、現在も第4方面隊10分団に私を含めた６人が所属しています。従来から火災や捜索などの出動要請が出た際には消防団活動を優先させてきました。「消防団活動は消防設備士の仕事に大いに精通するから、招集が掛かったらまず行くべき」という先代からのカルチャーが現在も根付いています。

7月7日(水)、9日(金)は出動要請が出ている為、該当社員は出勤でなく出動を選択します。各方面の御客様にはご迷惑をお掛けして誠に恐れ入りますが、僅かでも災害救助の力になりたい一心です。どうぞご理解を頂けましたら幸いです。

防災物品・備蓄品　見直しのきっかけを

梅雨が明ければ大雨が来ないとは限りません。これから台風が襲来する時期にも差し掛かりますし、はたまた地震・津波といった災害はいつ発生してもおかしくはないです。災害が重複する場合に備えておかなければなりません。

当社はホテル・旅館、マンション、テナントビルを保有されているお客様が多く、災害に備えて防災物品を備蓄されていますが、物件によっては備蓄が無いもしくは十分でなかったり、備蓄倉庫の場所を含めて見直しが必要な顧客が多いのも事実です。当社も防災物品の取り扱いはございますが、楽天やAmazonなどのネットショップで購入した方が納期が早い場合もあります。当社からの知見が見直しのきっかけとなる事が目的です。最適な選択を取っていただきたいです。

消防訓練　災害想定の幅を広げる

消防法では各建物の防火管理者が主導して年２回の消防訓練が義務づけられていますが、この消防訓練は基本的に火災想定に限られています。大規模物件のみ地震や風水害の訓練も義務付けられていますが、残念ながらそれ以外の規模では法的な義務から外れてしまっています。

このような災害を受けて法改正があるかは定かではありませんが、我々が自主的に動く事はできます。例えば建物内の避難経路図はどこでも用意していても建物から避難所までの避難経路図は多くの物件で用意されていません。ハザードマップも加味した避難経路作成には我々も協力できると考えています。

また地域内の優秀な防火・防災管理者が互いに火災予防や災害対策事例を共有したり、地域特有の共通課題について協議するような、点と点を繋げるコミュニティーを創りたいと考えています。他業種でフラットな関係性ができれば物件を跨いだ地域単位での消防・防災訓練も可能になり、多くの参加者を巻き込んで防災意識の向上に繋げる機会を提供できるのではないかと。

熱海から多くの地域に広めていきたい

私は過去に熊本、広島といった地域での豪雨・土砂災害をメディアで知って、心のどこかでは遠い地域の話だと、身の回りの世界ではない事だと思ってしまっていました。そしてあの日、伊豆山の逢初橋を自分はちょうど10時半頃通過しています。別車両で社員も連れていました。お客様から要請があったとはいえ、自分だけでなく社員の命も危険に晒していたのだと、今猛省しています。

あの衝撃的な映像が全国に流れて、今一時は世間の防災意識は高まったと思います。しかし1年後、3年後、10年後はどうでしょうか。被災地となった熱海には決して忘れてはいけない教訓となりました。「想定外」という言葉はもう発してはいけないと強く感じています。

それでも前を向いて行けば、熱海はこれから全国一防災対策をする町へとなれる、そんな可能性が芽生えているのではないでしょうか。「熱海ではこんな地域防災の活動をしているよ」「熱海の消防設備業者はこんな提案までしてくれる」　熱海市民として、消防に従事する会社の一員として、多くの地域にも広められるような活動がしたい。そう考えています。

重ねて安否不明となっている方々、災害救助に尽力されている皆様方の無事を願っています。

株式会社ウェックス　　渡辺淳司